ぺピン
目は相変わらず、閉じたままだった。

嫌でも自分は兄の身代わりなんだと、思い知らされる。

(俺はいつになったら、京香に“春馬”として見てもらえるのだろう?)

亡くなった兄の身代わりとして京香を抱くのは、もうごめんだ。

だけど、京香は一馬のことを深く思い、深く愛している。

自分が思っている以上に、京香は一馬を思っている。

(もういい加減、兄貴のことを忘れてくれ…。

初恋に縛られるのは、もう終わりにしてくれ…)

そう思うのは簡単だが、実行に移すことができない。

結局は、自分から京香との関係を終わらせるのが怖いだけなのだ。
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