ぺピン
「――う、上杉さん…」

名前を呼ぶ恭汰をさえぎるように、京香は服に手をかけた。

「う、上杉さん、酔ってるんだったらやめよう?

こう言うのはよくないよ」

恭汰は京香の腕を軽くたたきながら話しかけた。

京香は耳元に唇を寄せると、
「先輩は私のことが嫌いですか?」
と、ささやいた。

「高校時代から私のことが好きなら、私を抱いてもいいですよ」

そうささやいた京香に、
「た、確かに好きだけど…。

だけど君は既婚者で…」

弁解をしようとする恭汰をさえぎるように、
「既婚者には手を出さないなんて、先輩らしいですね」

京香が挑発するように言った。

その瞬間、恭汰の心の中を支えていた理性がプツン…と音を立てて切れたような気がした。
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