ぺピン
シーツから腕を出すと、ひんやりとした空気が包み込んだ。

暑くなってしまった体温にこの空気は心地よい。

「で、その先輩とやらは身代わりになれたか?」

隣で寝そべっている男が京香に話しかけてきた。

「ヤだ、終わった後にその話?」

京香はクスクスと笑った後、自分たちが横になっているベッドの下に視線を向けた。

ベッドの下には脱ぎ捨てた服や下着が散らばっていた。

「昨日からずっと気になっていたんだ。

別に話してくれたっていいだろうに」

男は笑いながら言った。

「今だってこうして兄貴の役を上手に演じたんだからさあ」

耳元に唇を寄せてクスクスと笑った男に、
「不合格だったわ」

京香は言った。
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