ぺピン
毒づくように言った京香に、
「初日早々に忘れ物をしたのが迂闊だったな」

男が言った。

「ホントだわ。

家にまで押しかけてこられたらどうしようかしら?」

そう言った京香に、
「じゃあ、俺が家にいてそいつを追っ払ってやろうか?」

男が言った。

「あら、ずいぶんと気前がいいのね。

この前はめんどくさいとかって言ってたくせに」

バカにするように言った京香に、
「俺だって気前がいい時があるさ。

何より、おもしろそうだし。

その代わり…」

顔を近づけてきた男に、
「わかってるわよ、春馬」

京香は同意したと言うように、唇を重ねた。
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