東京片恋専科。

「ビール、飲む？」

そう言いながら広瀬くんが缶ビールを持ってきてくれた。

「ありがとう」

受け取ってプシュっと缶をあける。が、実は私は超絶お酒に弱い。だから普段は全然飲まないのだけど、広瀬くんはそれも知らないんだろう。

またふと、これまで好きだと思うだけで何もしてこなかった自分が情けなくなる。

《今日から！今から！片想い始めるんだ！》

強く胸に誓い、ビールをひと口飲んだ。



「で、何があったの？」

そう聞く広瀬くんはなんだかちょっと楽しそうだ。テーブルに頬杖をつき片手にビールを持ちニコニコしている。

「…え、さっきの？」

「うん、元彼？の」

助けてあげたんだからそれくらい教えてよ、なんてふうに。
広瀬くんに元彼の話をするのは本当はちょっとビミョーだけど。でも、どちらかというとクールで詮索をしないタイプの彼がこんなふうに自分に少しでも興味を持ってくれたことは、進歩に思えた。