東京片恋専科。
「うーん…なんていうか…
私がはっきりした理由も話さずに別れようって言っちゃったから 。むこうは納得できてないみたいで。」

「なるほど。本当ははっきりした理由があるんだ?」

広瀬くんはゆっくりとやさしく、まるで子供の話を聞くみたいに話す。なんだか私はその声に安心して本当のことをどんどん話してしまいそうだ。

「そう、付き合うときは私も相手のこと本当に好きになれるかもって思うんだけど…いつもしばらくするとダメになる。

心にひっかかってるひとが消えなくて」


ここまで話して《言いすぎた!》とハッとしたけど、もう遅い。

「ひっかかってるひと?つまり好きな人がいるのに他の人と付き合ってたの?」

「………。」

そんなにはっきり言われると、何にも言えない。己の最低な行動が露呈してまた泣きたくなってきた。

「ごめんごめん、責めてないよ。俺も同じようなもんだし」

意外な言葉に、へ?と顔を上げる。

「まあ俺の場合は別に好きな人がいるとかじゃないけど、相手の好意や意思になんとなく合わせてお付き合いしてきたみたいな感じ」

自分の意志ではなく。少し小さな声でそういうと広瀬くんはビールを飲み干し、新しいビールをとりに行った。
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