東京片恋専科。
目を開けるとそこには愛しの広瀬くんがいて、私はまぎれもなく彼を抱きよせてキスをしていた。

唇を離し、至近距離で目が合う。

「……。」

「……。」

私は自分のしでかしたこととこの状況に軽くパニックになって、身体はかたまったまま、目をパチクリさせた。

が、どちらともなくもう一度唇が重なる。今度はもっと深く。長く。

私は再び目を閉じる。あまりの気持ちよさにくらくらしてくる。自分がどこかに飛んで行ってしまいそうな感覚なのに、

《本当に好きな人とキスするとこんなに気持ちいいものなのね》

なんて一方では冷静に考えたりもして。



しばらくして、唇が離れる。
少し見つめ合う。こんなに至近距離で見る広瀬くんは初めてで、それだけでもドキドキして心臓がバクハツしそうだというのに……!!


「止まらなくなりそうだからその表情やめて」

「へ?」

予想外の言葉に間抜けな声を出してしまった。

「エロい」


《…エロい!!??私は自分から抱き寄せてキスをした挙句、エロい顔をしているエロ河童??!!!》

頭の中が支離滅裂である。混乱して口をパクパクさせていると、

「…落ち着こう、俺もだけど」

広瀬くんの声で我に返った私は、少し離れて正座に座り直した。

「ごめんなさい、寝ぼけていました」

私は三つ指をついて頭を下げた。

「いやこちらこそごめん…
ていうか酒弱かったんだね、知らずにすすめたのもごめん」

「いやっそれは!私が今夜は飲みたい気分だったので!」

「…ならいいんだけど」

必死の形相の私に引いたのか、広瀬くんは小さく笑いながらそう言った。
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