東京片恋専科。
「高2の終わりから付き合ってる子がいるよ」
クラスのみんなで親睦を深めようということで初日に開かれた飲み会。
みんなまるでそれが社交辞令かのように彼氏彼女の有無や恋愛について聞いたり話したりしていた。
その質問が広瀬くんに向けられたとき、私は聞き耳を立てながら心の中で《彼女いませんように!!!》と強く祈ったが、彼のその一言でそんな祈りは一蹴され、舞い上がった気分は一気にどん底へ。
《ましてや高校のときからの彼女って!リア充か!》
心の中で悪態をついているととなりに座っていた優香里(ゆかり)と美香(みか)が小さな声で話しかけてきた。
「希ちゃんはどうなの?彼氏とかは」
「いや、私は女子校だったし勉強ばっかりで…彼氏できたことない…」
「うそっ!!一緒!私もだよー!私は共学だったんだけどね…ハハ…」
思いがけない優香里の言葉がヤケにうれしくて。
「こんなにかわいいのに!なんか嬉しい!」
思わず素直にそんな返事をする。
「美香ちゃんは?」
「私は2年くらい付き合ってる彼氏がいる」
「へぇ〜いいね〜」
私と優香里は口を揃えた。美香は決して目立つ感じではない、おっとりしたタイプ。そんな美香に2年も付き合っている彼氏がいるということは当時の私にはとても大人っぽく羨ましく思えた。