東京片恋専科。
電話を掛け直す。まもなく亮太が電話に出る。

「もしもし…?」

「希?俺、やっぱり納得できない。突然すぎるし…」

「ごめん」

「ごめんじゃなくて。ちゃんともう一回話そう?家の前にいるんだ。出かけてる?」

「…うん、でももう」

ーー話すことはない。そう言いたかったけど、私は亮太に何も素直に話せていない。もちろん広瀬くんのことも。
『やっぱりなんか違う気がする』『嫌いになったわけじゃない』そんな寄せ集めたようなとりとめのない言葉で別れを告げられた亮太が納得いかないのも当然だし、悪いのは広瀬くんのことをずっと気にしながら他の人と付き合っていた自分だ。さすがに自分でもこの行動が間違いだったと3人目にしてようやく気付いた。

そんな自分が情けなくなり、たまらず涙がこぼれた。

「…ううッ…グスッ」

「なんで泣くの」

「今日は…あ…会えない…ごめ…」

「ずっと待ってるから帰ってきて」

亮太の優しい声を聞くとますます自分が情けなくなる。

電話を切って、手で涙を拭い、振り返ると…

「…!!!」

すぐ後ろにいたのはまぎれもなく、広瀬くんだった。

「…ア、アレ?もう帰るの?」

誤魔化すように話しかけるが、涙声だし、顔はあきらかに泣いたあとでぐしゃぐしゃだ。

「あ、うん。疲れたから早めに抜けた。


……そんなことより小石川さん泣いてるの?電話、元彼?」


《ですよねーーー!!!!》


「いや…うん…、ちょっと…」

「…大丈夫?」

広瀬くんにかけられた言葉に一度は止まりかけた涙がまた一気に溢れ出す。
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