東京片恋専科。
▸2 はじまりは甘いキス
「俺んちすぐそこだし」

そう言って広瀬くんはニコッと微笑む。良いのか悪いのか、下心は全くない、ただの人助けであることはその表情からすぐ分かる。

「ぜひ、お願いいたします…」

私はふたつ返事にそう答えた。そして、少し大げさに頭を下げる。そんなふうにわざとらしく振舞わないと、気持ちがバレてしまいそうで。

《このタイミングでこんな助け舟、乗らない手はない。もしかしてついに私の番が来たのかもしれない…!》

私はすっかり浮かれて、広瀬くんの家へ向かう足取りもなんだかふわふわしてしまう。

繁華街を抜け、静かな夜の街をふたりで歩く。そんなことすらも、初めてのシチュエーションである。

《一体私はこの2年と少しの時間、何をしていたんだ…》

ふと自分が随分と遠回りしていたことにいまさら気付く。
< 9 / 24 >

この作品をシェア

pagetop