小宮の隣・俺のモラル
わけがわからない。
小宮とキスしてしまった情報を処理できない。
「…なんで…っ!こんなことすんだよ!」
思いっきり小宮を突き飛ばした。
ードンッ!ー
「由希…困らせたならごめん。けど、由希だから、キスしたくなったんだよ。」
困る以上に、もっと別の衝撃が走る。
男の俺と、男の小宮。
「…ちょっと…冷静になる…。まず、俺は、小宮にとってなんだ…?」
恐る恐る聞いてみる。
「んー…。同期以上かな?つーか俺、女に興味ないから。」
そんな、しれっとした顔で言うなよ…。
考え込んでいる俺に小宮は言う。
「お昼に話してた子と付き合ってるんだろ?俺知ってるよ。」
「はっ?なんで?!」
「っくく…動揺しちゃって、やっぱり由希は可愛いなぁー。俺は、由希のことずっと見てきたんだから、なんとなくわかる。」
正直怖いと思った。
誰にも言っていないはずなのに、何故知っているんだ…。
「小宮すげーな。観察力。」
「違う。由希が鈍感なだけ。っつーことで、飲み直そ!」
何事も無かったかのように、ビールを飲み始めた。
「小宮…俺…男とっていう選択肢は、人生でなかったぞ…。」
至って真面目に話す。
「……プッ!止めろよ!…っくく!おかしー!…わかってるよ。んなもん。」
「…っ!笑うな!」
はいはいと言わんばかりに手をヒラヒラさせる。
「風呂入ってくるわ…。」