小宮の隣・俺のモラル
2人っきりになり、静まり返った玄関先。
「……帰るわ。」
「ちょっと待てよ!由希!話しの途中だろ!」
帰ろうとする俺の腕を掴んだ。
「話すことなんて何もない。聞きたくもない。」
突き放してしまえば、お互い諦められるだろう。
「由希は、ズルいよ。堅物だし、素直じゃないし…気持ち無視してんのは由希の方だろ!!俺の気持ち知ってて…。」
小宮は、泣き出しそうな、触れたら壊れそうな表情をしている。
「泣くなよ…中入るから。」
部屋の中に入ると小宮と違う香りがした。
甘くてクラクラしそうな……あの男の香りか…。
「小宮。俺はどしたらいいんだ。あれから、小宮の存在が多くなりすぎて…おかしいんだ…。わからない。何か怖いんだよ…。」
素直に話してみよう。
解決するかもしれない。
「ねぇ。由希…それってさ…告白してんの?」
は?告白?
「ちげーよ!」
動揺を隠せない。
「…もっと素直になって…由希のプライドとか意地とかモラルとか…全部無くして考えて…?そうしたら、答えは導き出せるから…。」
小宮の一言で、心がほどけていく。
重い鉛が溶けていく。
「…はは…っ。小宮すげ…。俺……。」
好きって気持ちだったんだ。
今更気づいた。