小宮の隣・俺のモラル
「由希…?俺のこと好きになった…でしょ?」
意地悪く微笑んでいる小宮が愛おしく思える。
「ば、ばか!そんなこと言うから…気になっただけだろ…。」
「……顔真っ赤だよ?」
小宮の冷たい手が俺の頬に触れた。
「っつ!…うるさい…!」
「強がっちゃって可愛いなぁ…。俺を理由にして、由希自身が納得できるなら、どんなこと言われても構わないよ。」
「はぁ…?」
何を言ってるんだ。
俺が男と関係をもつことが普通じゃないって思ってることを小宮は、知ってるみたいな言い方だ。
確かに…何かに理由を付けている方が楽なのかもしれない。
けど、それは本当に俺の望んだ気持ちなのか?
「…だから…俺にキスされたのも、最後までしたのも…全部俺が強引にしたって思っててくれて構わないよ。」
小宮は、自覚はないんだろう。
思ってもいないことを口にしたとき、きまって悲しい顔をする…。
こんな小宮見たくない。しかも、俺が原因なら尚更。
小宮は、強引だったわけじゃない。
本当に嫌だったら、拒めたはずだ。
「…違う…!」
俺は………
「違わないよ。」
小宮が……
「…好きだから許せたんだよ。」
長い沈黙だった気がする。
気持ちを告げてから、小宮の顔を見れなかった。
俺に向く視線も、声も、指先も、全部好きだったんだ。