小宮の隣・俺のモラル
「あーーー!終わった…。」
時計を見ると19時を過ぎていた。
小宮は、来ると行ってたがまだ来ていない。
「ったく…来ねぇじゃん…。」
俺は自分のオフィスを後にし、小宮のいる所へ向かった。
途中にある喫煙所で誰かが話している声が聞こえてくる。
「うん…。へぇ……。だから、無理だって。」
電話で何か言い合ってる様だ。
「今日は、空いてねーし、お前より大切な用事なんだよ。……は?彼氏?お前が?ないな。…んじゃ。」
聞いてはいけない気がして立ち去ろうとした。
けれどこの声は…。
ーガラッ!ー
「うわっ!こ、小宮!」
「あー…。由希…ゴメン今から行こうと思ってた。もう、帰れる?」
「あぁ。」
今日は、俺と突然飲みに行く約束して…。
大切な用事?
彼氏ってなんだ?
また、女と約束してたんだろう。
俺は、小宮にきちんとした彼女が出来ることを祈ってる。
「どうした?難しい顔して。もしかして…電話の内容聞いた?」
「聞いたっていうか、聞こえた…。聞かれたくない話だったら悪い…。けど、話が全然見えないから…大丈夫だろ?」
小宮は、フッと笑った。
「…そうだな。」
まただ。昼飯の時と同じような顔をした。
目に光がなくなって、どこか悲しそうな顔。俺はいたたまれなくなって、声を掛ける。
「てか!大切な用事あるなら、今からでも遅くないんじゃないか?」
驚いた顔をする小宮。
「つーか、やっぱり、話聞いてたんじゃーん。あんなの嘘!ただ口実が欲しかっただけ!さー!由希!飲むぞー!」
俺の一歩前を歩き始めた。