小宮の隣・俺のモラル

帰り道、悠に連絡を入れる。

『もしもーし！珍しいー！』

電話の向こうにある声にホッとした。

「今、彼女と会ってた。」

『………そっか。』

声の色が変わる悠は、きっとまた悲しい顔をしているんだろう。

「んで、別れた。」

『はっ？！本当に？』

「本当だよ。嘘なんて言わないよ。」

このことを悠に言う俺は、ひどく緊張している。

『そっか……！そっかー！！』

「あぁ。」

俺は、何を期待しているんだ…。
会話が続かない。２人の間に流れる沈黙と気まずさから、電話を終わらせようとする。

「つーことで、報告だ。んじゃあな。」

「由希待って！なんで別れたの？」

「まぁ、あんまり上手くいってなかったし…。」

どこまでいっても、俺は素直になれなかった。

『ふーん…好きな人が出来たとかじゃなくて？』

「そうかもしんないけど…。正確に言えば気になる人かな？」

『由希は、俺のこと好き？』

「………好きだ。友達として。」

『友達として？』

「そ、そうだよ。」

俺は、悠のどんな言葉を望んでるんだ？
答えは、１つしかないのに…。

『……そっか。んじゃ、また会社で。』

一方的に電話を切られた。
今更強がったって、ダメなのに…。
これじゃ、悠を怒らせてしまっただろう。

一度口にした言葉は取り返せないのに、俺は今すごく後悔している。

‘友達として？’

悠の言葉が頭から離れない。
友達以上の存在だと言えればよかったのに。

明日会社で顔を合わせるのが、気まずい…。