嘘でも良い
月の封筒
次の日の朝。
あたしはいつもより早く家を出た。
ラブレターの代筆をした次の日は、早く出て男子の机の中に手紙を入れるのがお決まり。
それ以外はお姉ちゃんと登校するから、この時ばかりは気にせず歩くことが出来る。
お姉ちゃん、愚痴とナルシスト発言が多いからさ。
聞いていると、イライラと嫉妬心で爆発しそうだから、たまにはって1人で登校している。
お姉ちゃんは朝弱いから、まだ寝ている。
『一緒に行きなさいよ、双子なんだから』
『双子だけど、あたしはお姉ちゃんと違うから』
朝お母さんに言われた言葉が、頭に響く。
お母さんは過保護だ。
特にお姉ちゃんに対して。
お姉ちゃんは可愛く、外面が良いのは言ったけど。
幼稚園生の頃はそんなんじゃなかったんだ。
可愛くって人懐っこい、疑わない性格だった。
その性格のせいで、お姉ちゃんは過去に誘拐されそうになった。
犯人も馬鹿だったのか、幼稚園の間で堂々とお姉ちゃんを誘拐しそうになり、すぐに幼稚園の職員がお姉ちゃんを誘拐犯から離したから、無事だった。
それからというもの、お姉ちゃんは誰にでも愛想良く接するものの、前ほど他人に心を許さなくなった。
外面が良くなったのも、思えばその時からだと思う。
その誘拐犯、さらおうとしたのはお姉ちゃんだけ。
当時からあたしはお姉ちゃんと違うんだと言われてきたんだ。
双子だからって言い返していたけど、その誘拐犯のあたしへの対応によって、あたしはお姉ちゃんと違うことを実感した。
ある意味、その先傷つかずに済んだから、誘拐犯には感謝している。
同時に、何であたしをさらおうとしなかったのかって怒りも湧くけどね。