嘘でも良い
勝手な想像かもしれない。
本当に越田夏美なのかもしれない。
だけど、越田夏美には思えない文章が多いんだ。
越田夏美は頭にヘアピンをつけているけど、その色はピンクなど女子らしいものはつけない。
対して越田夏月は、鞄に小さなピンク色のリボンをつけている。
越田夏月の方が、中身からして女子らしい。
どちらかと言えば女子らしいことが苦手そうな越田夏美が、チューリップなんて花好きになるか?
たった1通のメールだけで、あんなに喜びを表現できるだろうか?
僕の勝手な想像だ。
間違っている可能性は、大いにある。
だけど……。
僕はケイタイを閉じようとした手を止め、再び開く。
<本当は今すぐ、
そこに、行きたいです>
もし君が求めるのなら。
<あなたの話を、
聞いてあげたいです>
君が、求めるのなら。
<ありがとう。
その言葉だけで、十分です。
本当に、嬉しいです。
あたしも出来ることなら、
すぐにムーンくんに会って、
お礼を言いたいです>
なんてこのない、“あたし”という一人称。
僕は、確信した。
越田、夏月だ…と。