嘘でも良い
越田夏美は、自分を“私”と言う。
“あたし”と聞き間違えるのが難しいほど、ハッキリと。
メールでも、普段の口調が出ると思ったんだ。
誰でもわかる“あたし”と言うのは、越田夏月の方だ。
つまりこのメールは、越田夏月?
<もし良ければ、
明日の手紙に、
写真を同封してくれませんか?>
驚いた。
僕は急いで机の引き出しを開け、チューリップの写真を見る。
いつもより良いチューリップ畑の写真を同封しなければ。
なんだかんだ言っても、僕も楽しみなのかもしれない。
“彼女”とメールするのが。
見つけた。
“彼女”が喜びそうな、写真を。
この間のチューリップ畑の夜の写真。
満月が綺麗で、月の封筒みたいだ。
僕は良いというメールを送った。
そして手紙を書きだす。
<越田夏美様
どうでしたか?
喜んでいただけると嬉しいです>
本当に君は、
越田夏美なのか?