嘘でも良い
喜んでいる彼女に向かって、住所を教えてあげるとメールすると。
<ありがとうございます!
明日の手紙を、楽しみにしています>
そんなメールが来て、僕は閉じた。
メールなんて嫌いだった僕だけど。
何でこんなにも、やり取りが楽しいと思うんだろう。
直接会って、チューリップについて話したいと思うんだろう?
僕の声は、出ないのに。
惹かれているのか?
彼女に。
…越田夏美は、兄貴の彼女だって言うのに?
僕なんかが好きになっちゃ駄目だと、気が付いているのにか?
僕はその日、上の空で授業を受けた。
授業なんて、聞いていられなかった。
別に勉強面で困るところはないし。
僕は窓の外を見ながら、ぼんやりと考えていた。
放課後。
帰ろうと鞄を持って歩いていると。
教室を出てきた人と、ぶつかった。
「ご、ごめんなさい!
大丈夫ですか?」
焦ったような声だけど。
僕はすぐに声が誰のモノかわかった。