嘘でも良い
「つ、月更くん……」
驚いたように僕を見上げる、背の低い越田夏月。
鞄が開いている所を見ると、急いでいるんだな。
「大丈夫?」
眼鏡越しだけど上目遣いになる彼女。
僕は何度も頷いた。
こんな目されたの、初めてだ。
「本当、ごめんね!」
再び走り出す彼女。
すると彼女の鞄から、ふわりと封筒が出てきた。
空中を舞った封筒は、はらりと下に落ちる。
僕は誰も拾わない封筒を、拾った。
「…………!?」
見覚えのある、ぼんやりとした月が綺麗な封筒。
同じく見覚えのある、僕の字。
僕が毎朝、兄貴の代わりに書いて、越田夏月の下駄箱にいれている、越田夏美宛ての手紙だ。
何で彼女が、持っているんだ?
可笑しい。
可笑しい。
…可笑しい。