嘘でも良い
だって朝、僕は確かに受け取った。
越田夏美からの、メールを。
あのメールは、封筒を開けなければうてない文面だ。
しかしその手紙は、越田夏月が持っている。
越田夏美じゃない。
越田夏月だ。
越田夏月が、越田夏美の代わりにメールしているんだ。
疑惑が、確信へとなった瞬間だった。
てか、ボーッと手紙を見ている暇じゃない。
僕は急いで、越田夏月を追いかけた。
彼女は思っていたより足が遅く、すぐに追いついた。
名前を呼ぼうと口を開くけど、声は出ない。
僕は肩を軽く叩いた。
手紙を渡すと、彼女は落としたことに気がついていなかった。
ふわり、と嬉しそうに微笑みお礼を言うと、丁寧に鞄へ仕舞いこんだ。
越田夏美が、越田夏月?
でもあの手紙を大切そうに扱う姿は、そう思わざるを得ない感じだった。
越田夏月も、僕と同じように、姉の身代わりか?
最初の対応は、姉に真似て?
チューリップを好きだと言ったのは、本心?
あれは身代わり―――演技には見えない。
僕はチャイムが鳴るまで、その場に立ちつくしていた。