嘘でも良い
教室へ戻ると、メールが来た。
僕は一瞬躊躇ったけど、開いた。
<ムーンくん。
どうして手紙をくれなかったの?>
たった2行のメールから伝わる、悲痛さ。
僕は途端に、罪悪感に襲われた。
越田夏美に彼氏が出来たからって、手紙をやめてしまうほど、ムーンは悪い奴だったか?
涙を止める方法を聞いてくるほど信頼しているムーンからの手紙を失って、越田夏月がどんな思いをしているのか。
……良いのか、こんな簡単に終わらせて。
返信は、出来なかった。
何をうって良いのか、わからなかったのだ。
どんな文面を送っても、彼女を傷つけそうで。
返信を送れないでいると、メールが来た。
開けようか迷ったけど、開けた。
手が震えているのが、自分でもわかった。
送られてきた、長文メール。
どんなメールよりも長いメール。
それには全てが書かれていた。
やっぱり、越田夏月だったんだ。
姉の身代わりをしていたんだ。
そして書かれていた、越田夏月の本当の気持ち。
<ムーンくんのこと、大好きです。
ありがとう>
いや、違う。
ありがとうを言うのは、僕の方だ。
今まで騙していたのは、僕も同じだ。
僕らはお互い、相手を騙し合っていたんだ。
お互い様じゃないか。