嘘でも良い






さらってほしいなどと奇特なことは思わないけど。

誘拐未遂事件があってから、両親のあたしたち双子に対しての対応は変わった。

お姉ちゃんに対して“のみ”過保護になったんだ。

あたしは放任されている。

別に干渉されるのはそこまで好きじゃないから良いんだけど。

何事もお姉ちゃんが優先されるのには、ムカついてきた。



家でも学校でも―――いや、世間では、あたしよりお姉ちゃんを中心に回っているんだ。

同じ親から生まれたあたしとは、天と地ほどの差があるほどの扱いをこれからも受けて行くんだ。








学校に着いたあたしは、下駄箱から靴を取り出そうとパカッと開けた。

すると上履きの上に、手紙が置かれていた。

こんな朝早くから置かれているのなんて、初めてだ。

あたしは手紙を取り、表にした。




【越田夏美様】




別にわかっていたことなので、いつも通り鞄に仕舞おうとして、やめた。

便箋が、とても可愛かったからだ。



いつもお姉ちゃん宛ての封筒は、ピンク色を基調にした、いかにも女の子や姫らしい模様のモノばかり。

よく言えば、ファンタジーちっく。

悪く言えば、小学生。

そんな柄物が多かった。



だけど、今回は違う。



紺色を基調とした、とても大人っぽいものだった。

切手を貼る部分にぼやけた満月が描かれていて、星が散りばめられている。

星と言ってもシャーペンで書けるような星ではなく、ぼやけた、本当の星空みたいな絵だった。






< 11 / 123 >

この作品をシェア

pagetop