嘘でも良い
「お前、越田夏月が好きになったのか!?」
<好きかどうかは、わからない>
だって僕、女子と関わったことなんてないし。
挨拶とかで話す程度。
それも最近は出来ないからしていないし。
「でもメール出来なくなったのが寂しいんだろ?
それって明らかに恋じゃねーかよ」
何故か嬉しそうにニヤニヤとした笑みを浮かべる、兄貴。
僕は首を傾げた。
そんな簡単に、人って人を好きになるもん?
「良いか彷徨。
恋に落ちるのに時間なんてねーんだ!
一目惚れって言うのも、世の中に存在するしな」
一目惚れ、ねぇ。
一瞬だけの気もするけど。
「一目惚れを馬鹿にするなよ彷徨。
俺だって夏美は一目惚れだ。
女なんて全員同じ、と考えていた俺の考えを、夏美は覆したんだ!」
まるで青春ドラマのように熱く語る兄貴。
「青春ドラマで良いんだ彷徨。
お前と同じ立場っぽい越田夏月なら、お前を好きになるかもしれねーぞ」
そうかなぁ?
さっきから思うんだけど、兄貴なんで僕の考えていることわかるの?
兄貴ってエスパーなんじゃないの?
それとも双子だからわかるの?