嘘でも良い
「越田夏月はお前と同じで、チューリップ好きなんだろ。
じゃあ花言葉ぐらい、わかるだろ。
今ならネットでも調べられるしよ。
越田夏月は夏美の代わりにメールをうっていたんだろ。
夏美に渡したメアドの意味が望みのない恋だって気が付いた時、越田夏月は間違いなく哀しむよな。
望みのない恋だとしても、夏美を喜ばせようとしていたムーンの気持ちを知らずに、“自分は夏美じゃありません、越田夏月です”って言っちまったんだから。
絶対誰でも後悔するぜ。
自分の正体を、ムーンに明かしたこと」
僕は兄貴から言われ、初めて気が付いた。
純粋にチューリップの写真をもらって喜んでいた越田夏月だ。
花言葉を知った時、間違いなく哀しむだろう。
「彷徨。
今からでも謝って来い。
それで、自分の気持ち、伝えて来い」
…そうだ、僕は。
気が付いていたんだ。
越田夏月が、
好きだってことに。
手紙やメールのやり取りだけじゃない。
2回出会って、面と向かって話した時も。
…僕は越田夏月に、一目惚れしたんだ。