嘘でも良い
あたしたちは、ある場所に向かっている。
ずっとずっと、行ってみたかった場所。
「うわぁ…綺麗!」
思わずあたしはその圧倒される光景に、声を漏らした。
目の前にどこまでも広がる、チューリップ畑。
赤、黄色、白、紫、ピンクなど、色とりどりのチューリップが咲き乱れている。
ムーンくん―――彷徨くんがあたしに送ってくれた写真と、同じ光景だ。
そう。
あたしたちは、チューリップ畑に来ていたのだ。
彷徨くんは住所を教えると言ったその日に、皇紀くんから手紙は送らなくて良いと言われたから、あたしに住所を教えることが出来なかったのだ。
チューリップ畑に行きたいと思っていたあたしの夢が、まさか彷徨くんと叶えられるだなんて。
本当にあたしは、幸せ者だ。
トントンッと肩を叩かれ振り向くと。
パシャッと言うシャッター音が聞こえた。
彷徨くんが自分のケイタイで、あたしの写真を撮ったのだ。
「か、彷徨くん!?」
笑いながら彷徨くんは、写真を見せてくれる。
あたしとチューリップがドアップになった写真だった。
「は、恥ずかしいから消してよ~!」
彷徨くんは笑いながら首を振った。