嘘でも良い
凄く…綺麗で、ロマンチックだった。
あたしは上履きに履き変え、急いで教室へは行かずにトイレへ行った。
個室に入り、封を開けた。
躊躇いなんてなかった。
だって、いつも封を開けているのはあたしだから。
<越田夏美さん
突然ごめんなさい。
僕は、あなたのことが好きです>
封筒と同じ便箋に書かれた、たった3行の文字。
習字をやっていたのかなと思うぐらい、凄く綺麗な字だった。
ただし、出した人の名前が書かれていなかった。
封筒を隅々見たけど、差出人の名前が書かれていなかった。
僕って書いてあるから、男ってことはわかるけど。
共学の高校だから、たった1人の男を探すなんて無謀すぎる。
どうしよう。
これじゃあ返信も出来ないよ。
あたしは便箋を封の中に仕舞い、鞄へ仕舞った。
そして何事もなかったかのように、教室へ行った。
自分の机に鞄を置いたところで、あたしはハッと気が付く。
教室には、チラホラとクラスメイトがいる。
ただし朝が早いので、人数は少ない。
男女合わせて5人いて、男子はその中の3人。
あたしは教室を出た。