嘘でも良い






凄く…綺麗で、ロマンチックだった。

あたしは上履きに履き変え、急いで教室へは行かずにトイレへ行った。

個室に入り、封を開けた。

躊躇いなんてなかった。

だって、いつも封を開けているのはあたしだから。




<越田夏美さん
突然ごめんなさい。
僕は、あなたのことが好きです>




封筒と同じ便箋に書かれた、たった3行の文字。

習字をやっていたのかなと思うぐらい、凄く綺麗な字だった。

ただし、出した人の名前が書かれていなかった。

封筒を隅々見たけど、差出人の名前が書かれていなかった。




僕って書いてあるから、男ってことはわかるけど。

共学の高校だから、たった1人の男を探すなんて無謀すぎる。




どうしよう。

これじゃあ返信も出来ないよ。

あたしは便箋を封の中に仕舞い、鞄へ仕舞った。

そして何事もなかったかのように、教室へ行った。






自分の机に鞄を置いたところで、あたしはハッと気が付く。

教室には、チラホラとクラスメイトがいる。

ただし朝が早いので、人数は少ない。

男女合わせて5人いて、男子はその中の3人。

あたしは教室を出た。






< 12 / 123 >

この作品をシェア

pagetop