嘘でも良い






「こうなったら!」

「!」



無理矢理でもケイタイを奪い取ろうと、ぴょんと飛び跳ねるあたし。

彷徨くんはやはり笑いながら、ケイタイを高く上げる。

彷徨くんの方があたしより背が高いから、彷徨くんの頭より高くあげられると、あたしは届かない。





「彷徨くん!」




飛び跳ねるのを止め、あたしは彷徨くんを睨む。

だけど彷徨くんはあたしの頭をあやすかのようになでた。




「彷徨くん!
あたしを子ども扱いしないでよ」

<夏月可愛いから>




…たまに彷徨くんから来るストレートな言葉は、あたしをドキドキさせる。

あたしは恥ずかしくなって、彷徨の肩へ思い切り体重をかけた。

彷徨はバランスを崩し、あたしの方へ来た。

その頬めがけて、あたしはキスをした。

彷徨くんは真っ赤な顔をしていた。





「あたしを馬鹿にするからだもん!」

「………なつ、き」






………え?





「……不意打ち、すぎる」







そしてあたしは、彷徨くんに唇を塞がれたのでした。









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