嘘でも良い
それからまた次の日。
再びあたしは代筆したため、それを届けに早めに学校へと向かった。
届けるためではあったけど、本当の理由は違う。
あの月の封筒の人を探すためだ。
「……あった!」
思わず下駄箱を開け、声を出してしまった。
中にはまた、同じ封筒が入っていたのだ。
あたしは再び女子トイレの個室へ駆け込んだ。
<越田夏美様
昨日、名前を言うのを忘れてごめんなさい。
僕の名前は、ムーンです>
…はぁ?
ムーンって、月だよね。
とても封筒と便箋と似合う名前だけど、この学年にムーンなんて名前の奴はいないぞ。
あ、でも数人名字と名前に“月”が入る名前の人はいるけどさぁ。
何だかこの人、肝心なこと忘れていない?
この人、返信欲しくないのかな?
他の男子なら、憧れの越田夏美様からの手紙なんて、喉から手が出るぐらい欲しいだろうに。
せめていつあたしの下駄箱に入れたのかわかればなぁ。
その時間帯にいる人を見つけて、探して突き止めることが出来るだろうに。
てかこの人、何であたしの下駄箱にいれるんだろうか?
お姉ちゃん宛てなら、直接お姉ちゃんの下駄箱にいれれば良いのに。
あたしとお姉ちゃんを勘違いしているなんてないだろうし。
本当にこの人、謎が多いんだから……。