嘘でも良い
「夏月、たまには一緒に行きましょうよ」
「夏美の言う通りよ、夏月」
お母さんは知らない。
お姉ちゃんが何故、あたしと行きたがるか。
「……しょうがないなぁ。
じゃ、明日は一緒に行こうか」
「しょうがないって何なのよ夏月」
「まあまあお母さん、良いんだよ。
夏月、ありがとうね」
ニッコリ、黒い笑みを浮かべるお姉ちゃん。
特にゾッとなんてしない。
…いつものことだから。
もう寝ようと、電気に手をかけた時。
ガチャリ、とお姉ちゃんが入ってきた。
「夏月、ありがとうね?」
「明日は何?」
「絵の具セットよ。
全く、何で高校生にもなって絵の具なんて使うのかしらね」
「そう。
じゃああたしは寝るわ、お休み」
「待って。
莉々子(りりこ)とメールしてくれない?」
「……良いけど、良いの?」
「あの子メールし始めると長いんだもの。
夏月は私に化けてくれるから、嬉しいわ」
欠伸をしながら、お姉ちゃんは部屋を出て行った。
あたしの手には、スマホが握られていた。