嘘でも良い
莉々子というのは、お姉ちゃんの親友。
お姉ちゃんは美人で優しいから、女子にも大人気。
それも外面の愛想の良さの結果なんだけどね。
莉々子はお姉ちゃんより派手だけど、お姉ちゃんと気が合って、夜遅くまでメールすることがある。
ただお姉ちゃんはそれを面倒だと思っていて、あたしに莉々子とのメールを押し付けてくるのだ。
それをお姉ちゃんは「自分がやっているんだ」と、莉々子に言うため、莉々子は「夏美は優しい」と勘違いして、再び夜遅くまでメールするという悪循環になるのだ。
あたしはお姉ちゃんのスマホを持ち、電源を入れる。
あたしはガラケーだから、スマホの使い方は慣れない。
気が向いた時だけ、お姉ちゃんは莉々子とメールするから。
毎度ではないので、使う機会はないのだ。
そして手袋をつけて画面をスクロールさせた。
お姉ちゃんは自分以外の指紋が付くのを嫌うから。
外で誰かにスマホを触られると笑顔で対応しているのに、家に帰れば物凄い勢いで画面を拭いているのだから、困ったものだ。
本当、潔癖症で嘘つきでナルシストで愛想の悪いお姉ちゃん、何で男子は好きになるんだろ。
お姉ちゃんの外面の良さに、感心しちゃうよ。
<彼氏と喧嘩しちゃったよー>
自称恋多き乙女の莉々子は、話すことは恋バナだ。
「莉々子は良い子なんだけど、恋バナばかりして飽きる」とお姉ちゃんがよく愚痴をこぼす相手でもある。
それでも外面が良いから愛想良く接して、莉々子が勘違いして。
本当にもう、愛想良くするのやめてほしい。
お姉ちゃんの身代わりをしている、あたしのことも考えてほしい。
<良い加減別れちゃえば?>
莉々子は、あたしをお姉ちゃんだと信じ込んでメールしている。
馬鹿なのか、それとも素直なのか。
あるいはどちらもなのか。
結局、莉々子とのつまらないメールのやり取りは、朝の4時まで続いた。