嘘でも良い
「ふわぁ……」
「なぁに夏月、寝不足?
またメールしていたんでしょ」
お姉ちゃんの身代わりにメールしていると知らないお母さんは、あたしを見て嫌そうな顔をする。
あたしにはメールするほど親しい友達はいないのに。
「おはよう夏月!」
寝不足のあたしと違い、お姉ちゃんは笑顔だ。
あたしが莉々子のつまらない恋バナに付き合っている時間、お姉ちゃんは夢の中。
あたしに任せて寝るとか、良い度胸しているよね。
きっと、あたしが逆らわないことを知っているからだろう。
「おはよう……」
「夏月も夏美を見習いなさい」
朝からお母さんに叱られるし、あの月の封筒も見れないし。
あたしってつくづくついていないよね。
そうだ、あの封筒お姉ちゃんにバレないようにしないと。
「じゃあ、行ってきまーす!」
「行ってきます」
「行ってらっしゃい、気を付けてね」
家の扉が閉まると、グイッとお姉ちゃんはあたしへ絵の具セットを突き出してきた。
「持ってくれるかしら?」
「……良いよ」
内心大きな溜息をつきながら、あたしは受け取る。