嘘でも良い
第1章
姉と正反対の妹
「夏美(なつみ)様、今日もお美しい!」
「夏美様、放課後暇ですか?」
「一緒に帰りませんか?」
「天使のようだ、夏美様は!」
男子の口から出るのは、全部夏美。
隣にいるあたしのこと、忘れないでー。
別にちやほやされたいわけじゃないけどさ。
「おはよう、皆。
今日放課後習い事で忙しいの。
帰りは一緒に帰れないわ。
夏月(なつき)と一緒に帰るから」
「こ、越田(こしだ)と帰るんだ……」
ほら、そこの男子。
あたしの目の前で残念そうな声出すな。
越田って、お姉ちゃんも越田なんだからね。
てか、お姉ちゃんもお姉ちゃんだよね。
何で「夏月と帰るから」とか言うわけ?
別にあたし子どもじゃないから、一緒に帰らなくても良いんだけど。
というかお姉ちゃん、嘘の笑顔振りまきすぎ。
誰もが目をハートマークにしちゃうじゃない。
思わせぶりな態度取るなよ、馬鹿馬鹿しい。
皆これが表のお姉ちゃんってこと知らないから、ホイホイお姉ちゃんの虜になるんだよね。
裏のお姉ちゃんの顔も知らないでさぁ。
人って、単純だよねー。
お姉ちゃんと、お姉ちゃんの自称ファンクラブの連中見ていると、つくづくそう思うよね。