嘘でも良い
「夏月。
夏月のメアドを、私のメアドとして教えなさいよ」
「は!?」
「その手紙の子、夏月に任せるわ。
夏月は私のことよくわかっているから、向こうも誰がメールしているとかバレないわよ」
「い、いつかバレちゃうよ…!」
男子にはメアドを教えないお姉ちゃんだけど、女子には軽々教えちゃう。
もしお姉ちゃんのメアドを知る女子と、この送り主が知り合いなら、メアドが違うものだとバレてしまう。
「その時は私に言いなさい。
私が夏月に任せたんだって言ってあげるわ」
「でも……」
「夏月、気になるんじゃない?
この手紙の送り主のことが」
気にならない、と言えば嘘になる。
お姉ちゃんの身代わりをするのも、大変だけど難しいことじゃない。
「………」
「じれったいわね、ケイタイ貸しなさい」
「ちょっ、お姉ちゃん!?」
素早くブレザーのポケットからガラケーを取り出したお姉ちゃんは、封筒を開けてメアドを見た。
「…イエロー……?」
英語得意なお姉ちゃんは、小さく呟いた。
だけど、その先がトイレの前を通り過ぎる女子の声で聞こえなかった。