嘘でも良い
増えて行くメールと手紙
彼―――ムーンくんとメールを初めて、1週間が経とうとしていた。
ムーンくんとはメールでやり取りをするけど、手紙も欠かさず毎日下駄箱に届けられていた。
下駄箱を開けた途端にある手紙から、あたしの朝は始まると言っても過言ではなくなっていた。
メールも、莉々子とのやり取りで嫌気が差していたけど、ムーンくんとは何時間でもやり取りしても良いと思えるほどだった。
だけどムーンくんが返信するのは、1日に多くても2回。
それ以上はいくら送っても、返信が来ることはなかった。
今日もあたしは、下駄箱を開けて手紙を持つと、急いで女子トイレの個室へ向かった。
<越田夏美様
今日は写真を同封します。
喜んでくださると嬉しいです>
写真?
あたしは封筒の中身を取り出す。
写真に写っていたのは、見事なチューリップ畑だった。
赤・白・黄色・紫・ピンクなど、様々な色合いだった。
チューリップが好きなあたしは、凄く嬉しかった。
あたしはケイタイを取り出し、メール作成画面を開く。
<写真見ました。
凄く嬉しいです。
ありがとうございます>
チューリップ好きだから嬉しい、と書きたかったけど。
お姉ちゃんはチューリップは好きじゃないから。
うっているのはあたしだけど、名前はお姉ちゃんだから。
小さく溜息をついて、あたしはケイタイを閉じた。