嘘でも良い
地味な男子
次の日。
あたしはお姉ちゃんの体操着を持って学校へ行った。
荷物を持つ仕事にも、慣れたよね、もう。
あたしは下駄箱を開けた。
いつも通り、月の封筒が入っていた。
いつ見ても、綺麗な封筒だよね。
ムーンって名前に、凄く似合っていると思う。
「あれ?
越田、お前それラブレターか!?」
「えっ……」
お姉ちゃんのファンクラブの会員だと言っている男子が、あたしを茶化してきた。
あたしは急いで、封筒を胸元に引き寄せた。
「夏美様にラブレターならわかるけど、越田には来ないよなァ!」
「……ッ」
男子は声が大きくて、皆あたしを注目している。
あたしを見る一部の生徒は、クスクス笑っている。
「貸せよッ!」
「やめて!」
手を伸ばしてきたけど、あたしは身を翻して走り出した。
そしていつも通り、女子トイレの個室へ駆け込んだ。