嘘でも良い
駆けこんで気が付く。
これ、お姉ちゃん宛てのラブレターじゃん。
毎回、最初には越田夏美様って書かれているんだから。
だから、あたしが持っていちゃ駄目なんだ。
「お姉ちゃんのだから」って言って、その場で渡せば良かったんだ。
家ではあたしに代筆を押し付けるお姉ちゃんだけど、ラブレターはちゃんともらうから。
中身は読まないけど。
全部同じないようだからつまらないって。
何で?
何で持ってきてしまったの?
何で「貸して」って言われて「やめて」って言ったの?
これじゃ…あたし……。
「……ッ」
あたしは首を振り、封を開けた。
そしてその内容と、同封されていた写真を見て、口元を抑える。
あたしは個室の壁と洋式トイレの隙間にしゃがみ込み、泣きだした。
<越田夏美様
昨日チューリップが
好きだと聞いたので>
一緒に入っていたのは、昨日よりも本数の多い、チューリップ畑の写真。
あたしのついてしまった“嘘”が、彼を喜ばせてしまったんだ。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
最低な女で、ごめんなさい。
嘘つき女で、
ごめんなさい―――……。