嘘でも良い
あたし、越田夏月。
ごく普通の平凡な、どこにでもいそうな高校2年生の女子。
肩までの黒髪に分厚いレンズの眼鏡をかけていて、膝下スカートだから、まぁ派手ではない。
むしろ地味。
成績は中の下で、スポーツも得意じゃない、取り柄はない。
隣で笑顔を振りまいているのは。
越田夏美。
あたしの双子の姉。
同じく肩までの茶色い髪にパッチリ二重の、膝上スカートだから、まぁ地味ではない。
だからと言って派手ではない、真ん中あたりに属しそうな女子だ。
成績は上の上で、スポーツも大得意な、完璧な人でもある。
…改めて思うけど、あたしたち本当に双子?
お姉ちゃんはあたしが言うのも何だけど、作り笑いが大得意で。
完璧な隙のない作り笑いで、男子を虜にする、魔女みたいなんだ。
まぁ本人の前で言ったら、叱られるけどね。
「じゃあね夏月」
「あ、うん。ばいばい」
お姉ちゃんは1組、あたしは2組だから、ここでお別れ。
あたしは教室内に入り、1人席に着く。
特に親しい友達はいない。
話す程度ならいるけど、こうして休み時間まで話す子はいない。
だからあたしは座って早々、お気に入りの小説を取り出し読み始める。
別に良いんだ、1人でも。
もう、慣れたことだよね。