嘘でも良い
あたしは泣き止み、立ちあがった。
そして鞄の中に手紙を仕舞いこみ、入っている手鏡で顔を見た。
少し目が赤いけど、バレないだろう。
あたしは個室を出て、教室へ向かった。
先ほどの男子とすれ違ったけど、何も言われなかった。
何か言われたら、「お姉ちゃんのだから」って言えたのに。
何で何も言わなかったの?
「はぁ……」
「何だぁ越田、元気ないなぁ」
体育担当の担任に会い、急いで顔を上げる。
「お、おはようございます」
「元気ないなぁ。
なら、職員室までこれ運んでくれるか?」
渡されたのは、体育で使う教科書。
1クラス分にしてはやけに量が多いので、きっと2クラス分ぐらいだろう。
担任が教室に入ってから、あたしは再び溜息をつき、歩きだした。
ぼんやりしていたのかもしれない。
だからきっと、彼とぶつかったんだ。
ドンッ
「あ、ごめんなさい」
思わず体育の教科書を落とし、しゃがみ込んで拾い始めた。