嘘でも良い
放課後。
あたしはいつも通り、校門へ向かう。
校門には相変わらず、男子に囲まれ嘘の笑顔を振りまく、お姉ちゃんがいた。
「夏月!」
いつものお姉ちゃんの嬉しそうな声と、男子から向けられる視線。
お姉ちゃんはあたしが好きだから、嬉しそうに名前を呼ぶんじゃない。
きっと手に持った体操着を持ってほしいんだ、あたしに。
あたしはただの、お姉ちゃんにとって都合の良い、道具だから。
お姉ちゃんに忠実な、しもべだから。
「さ、帰りましょう夏月。
じゃあね皆、また明日」
「「さようなら!夏美様」」
男子からの軍隊のような挨拶に振る、嘘の笑顔。
同情なんてしない。
きっとそれが嘘でも、彼らの幸せなのだから。
お姉ちゃんに予想通り体操着を持たされたあたしは、いつも通りお姉ちゃんの学校での愚痴を聞きながら、家へ向かっていた。
「……夏月?」
突然前を歩いていた女の子の5人ぐらいの集団の中央を歩いていた子に、名前を呼ばれた。
あたしとお姉ちゃんが立ち止まると、その子は笑顔であたしの前に立った。