嘘でも良い
水月と出会ったのは、中学へ入学して間もない頃だった。
その時からお姉ちゃんは誰にでも愛想良く接して、誰からも人気だった。
その妹であるあたしは地味で大人しくて引っ込み思案で口下手で。
お姉ちゃんとは正反対に、目立たない子だった。
誰にも相手にされず、あたしは1人で机に向かっていた。
その時、1番前の席にいた水月が、あたしに話しかけてくれたのだ。
『わたし、川井水月。
あなた、越田夏美ちゃんの妹だよね』
『…そうですけど』
『夏美ちゃんに似ていないね』
『…お姉ちゃんは、美人ですから』
『でも、あなたも可愛いよ。
名前、なんて言うの?』
『…越田、夏月です』
『漢字は?』
『季節の夏に、月と書きます』
『月?
わたしも下の名前の水月、水に月と書くの。
月の名前同士、仲良くしよ!』
それ以来、あたしたちは仲良くなった。
『夏月、最近嬉しそうね』
『友達出来たの!』
『良かったじゃない』
お姉ちゃんにとっては、当たり前のことだったろうけど。
あたしにとっては、嬉しい出来事だったんだ。