嘘でも良い
いつもの、チューリップ畑。
だけど今日は、それだけじゃない。
ぼんやりと幻想的に浮かぶ、満月が空に輝いている、夜のチューリップ畑の写真だった。
こんな綺麗な風景…見たことない。
ますますあたしは、ムーンくんが好きになった。
まさかこんなにも、あたしを喜ばせてくれるだなんて。
ムーンくんは天才じゃないだろうか?
綺麗な満月に、可愛いチューリップ畑。
まるで昨日の水月への哀しさが嘘のように、あたしの心は晴れ渡っていた。
あたしはいつもの、女子トイレの個室へ向かった。
本当にもう、日課になっているよね。
そこで手紙を開く。
<越田夏美様
どうでしたか?
喜んでいただけると嬉しいです>
あたしはすぐにケイタイを出し、メールを作成する。
<写真、ありがとうございます!
本当に綺麗で、驚きました。
今までも素敵だったのですが、
今日は本当に感動しました。
本当に、
ありがとうございます!>
少し長文になってしまったけど。
本当は直接言いたいけど。
忘れてはいけない。
ムーンくんはあたしのこと、お姉ちゃんだと思っているのだから。
ムーンくんにあたしは、恋をしてはいけないのだから。