嘘でも良い
<喜んでもらえて良かったです。
以前その写真を撮った甲斐がありました>
<ムーンくんが撮ったのですか>
<はい。
明日の手紙に、
住所を載せておきますね>
<ありがとうございます!
明日の手紙を、楽しみにしています>
いつも通り、返信は来なかった。
だけどあたしは、明日を楽しみにした。
例え叶う恋じゃなくても。
涙で終わった恋だとしても。
あたしは、それで満足だ。
束の間でも。
あたしは“幸せだ”と思えたのだから。
その気持ちだけで、満足だ。
それ以上は、何も望まない。
しかし、お姉ちゃん、最後には断っちゃうのかなぁ。
そうしたら、あたしがメールをすることもなくなるのか。
最初は嫌だなんて思っていたけど。
いつしか楽しみに変わっていただなんて。
…人って本当に、わからないや。
もしお姉ちゃんがムーンくんを振ることになったら。
あたしはその時、どうするのだろうか?
その決断が迫っていることを、
あたしはその時、気が付かなかった。