嘘でも良い
すると、肩を軽く叩かれた。
あたしは急ブレーキをかけ、振り向く。
回った勢いで風が吹いたのか、月更くんの髪が揺れた。
「え?ど、どうしたの?」
まさか引き止められると思っていなくって。
あたしは驚きながらも聞いてみた。
スッ…
月更くんはあたしの目の前に、何かを渡してきた。
それは、ぶつかったはずみに鞄から落ちたらしい月の封筒だった。
表紙に、【越田夏美様】と書かれていた。
「あ、ごめんなさい。
拾ってくれて、ありがとうございます」
あたしは馬鹿丁寧にお礼を言い、手紙を受け取る。
それを丁寧に鞄に仕舞い、ペコンッと小さく会釈をした。
「じゃあ、またね」
そして再び前を向き、校門へダッシュした。
「遅いわよぉ夏月」
「ご、ごめんねお姉ちゃん」
相変わらずの男子からの視線を受けながら、あたしは苦笑いを返す。
そして荷物を持たされ、家へ帰った。