嘘でも良い
「そういえば夏月。
聞いてくれる?」
いつものようにあたしがラブレターの代筆をしていると。
お姉ちゃんがベッドに珍しく座りながら、あたしを見てきた。
お姉ちゃんは普段寝転がるから、珍しい光景だ。
「どうしたのよ改まって」
「実は私、彼氏が出来たの!」
「ブッ!?」
飲み物飲んでいなくて良かった、と思えたのはきっと人生で最初で最後だろう。
「か、かかか…彼氏!?」
「驚きすぎよぉ夏月」
「お、お姉ちゃん彼氏作らないって…」
「そう思っていたんだけどね。
さっき夏月を待っている間に告白されたの」
「こ、こここ…告白!?」
「ええ。
他校の彼氏なの」
彼氏…。
お姉ちゃんに、彼氏…。
「じゃ、じゃあこのラブレターはどうなるの!?」
「彼氏が出来たって書き変えてくれるかしら?」
あたしは折角書いた10枚の返事の手紙をくしゃくしゃに丸め、ごみ箱に捨てた。
ボールペンでいつも書いているから、修正は不可能。
あぁ…紙が勿体ない。