嘘でも良い
いつものようにお姉ちゃんの体操着を持ちながら学校へ行くと。
校門にいつもより多くの男子がたむろしていた。
「「あっ、夏美様!」」
「お聞きしましたよ!」
「彼氏が出来たんですか!?」
中には先輩もいるって言うのに、お姉ちゃんに対しては誰にでも敬語を使う。
本当お姉ちゃんって、この男子たちにはどう見られているんだろ?
やっぱり最初から思っていたけど、女王様なのかな?
それで、最も女王様に近い存在が、あたし。
…アハハ、面白ーい。
何が面白いのかわからないけど、あたしは心の中で笑った。
「ええ、出来たわよ」
「誰ですか!?」
「他校の男子よ」
「他校ですか!?」
「どんな人ですか!?」
当分教室に行けそうにないので、あたしはお姉ちゃんに体操着を渡して校舎へ向かう。
後ろから男子の視線が痛い。
あれ、地味に凶器よね。
「夏美様の荷物ぐらい持ってやれ」とでも言うのかしら?
…好きに言っていなさいって感じ。
そんなことよりも。
あたしはなかなか下駄箱を開けられないでいた。
何だかずっと朝から消えない、嫌な予感。
予感が当たりそうで、怖い……。