嘘でも良い
個室に入り、便器の蓋に鞄を置く。
衛生面とか、正直気にしていられなかった。
そんなことよりも、確かめたいことがあった。
<ムーンくん。
どうして手紙をくれなかったの?>
例え嘘でも。
ムーンくんが誰を見ていても。
あたしにとっては、朝の時間が楽しみだったのに。
あたしの幸せ…奪わないで。
あたしの抱いた“好き”を、
嘘だと言わないで……。
メールが来ることは、なかった。
あたしは扉と便器の間に座りこんだ。
そして、声を殺して泣いた。
胸元で存在感を表すケイタイが、震えない。
あたしは、ある決心をした。
言おう。
全部。
嘘つかないで。