嘘でも良い
ムーンくんの気持ち
☆☆☆
「夏月、似合うわね」
「ありがとう、お姉ちゃん」
1ヶ月後。
ムーンくんと初恋に別れを告げて。
あたしは肩までの髪をバッサリ切った。
お姉ちゃんには、たまにはバッサリ切りたいと言ったんだけど。
本当は違う。
失恋したからだ。
失恋して髪を切るなんていつの時代だ、と突っ込まれるかもしれないから言わないけど。
髪を切って、新しい人生を歩み始めたいと思ったんだ。
また、ムーンくんみたいな相手が現れて。
また、恋をすることが出来るのなら。
その時にはまた、髪を伸ばしてみようかな。
本当はあたし、ロングヘアが好きだからさ。
「そういえば夏月」
「ん?」
「ムーンくんとどうなったのよ」
お姉ちゃんを今ほど意地悪だと思うことは、きっと金輪際ないだろう。
一瞬カチンと来たけど、笑顔で対処する。
あたしは越田夏美の双子の妹だもん。
作り笑いぐらい、出来るわ。