嘘でも良い







「別に良いじゃない。
何でうたなければ良かったなんて言うのよ」

「だって…あたし、言わなくて良いこと、言っちゃった…」




今までメールをうっていたのはあたしです。

何でそんなこと、言ってしまったのだろうか?

何も知らないまま、その恋を終わらせれば良かったのに。

何しているのよ、あたし。

自分で自分が、嫌になる。




「言わなければ良かったのよ…。
ムーンくんには今まで通り、お姉ちゃんからのメールだって思わせておけば良かったのよ。
何で素直に、白状しちゃったんだろう?
ムーンくんが、傷つくだけなのに……」




イエローチューリップの花言葉のように。

望みのない恋をお姉ちゃんに抱いてきたムーンくん。

緊張しながら、毎日送る3行の手紙と、2件のメール。

毎日毎日、あたしと同じように、“越田夏美”から来るメールを楽しみにしていたはずだ。

チューリップ畑写真も、“越田夏美”が好きだと言ったから、くれたのに。

何であたし、言っちゃったんだろう?




越田夏月が、“越田夏美”でしたって。




馬鹿じゃないの。

本当に、馬鹿。

夢は夢のままで良かったはずなのに。

どうして。

どうして。

素直に白状してしまったんだろう?





ごめんなさい。

メールをうっていた時よりも、強い罪悪感だった。




最低最悪な嘘つき女で、

ごめんなさい―――……。






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