嘘でも良い
ムーンくんの正体
ピーンポーン
「…誰かしら。
私、出てくるわね」
お父さんもお母さんも土日なのに仕事なので、泣いているあたしの代わりに、お姉ちゃんが出てくれた。
あたしは机の隣に座って、泣き続けていた。
視界に入る、赤いチューリップの花が、綺麗すぎる。
今日の朝、咲いたんだ。
だけど、写真は送れない。
一応ケイタイの写真フォルダには仕舞っておいたけど。
きっと、枯れるばかりなんだろうな。
赤いチューリップ。
さっき黄色いチューリップの花言葉を調べる際に見たけど。
凄く可愛い花言葉だった。
それを、ムーンくんに伝えられたら…良かったのに。
「夏月」
「…………」
「夏月に、お客さんよ」
「……え?」
あたしに……?
「珍しいわね。
夏月が仲良かったなんて」
お姉ちゃんは玄関の方向を見た。
そして、あたしに向き直る。
「早く涙拭きなさい。
それで急いで顔洗いなさい。
お待たせして、申し訳ないから」
「う、うん!」
あたしは袖で涙を拭って、急いで部屋を出て洗面所へ向かった。